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遺留分とは?相続人の最低限の権利と請求手続きを解説
遺産をめぐるトラブルは、家族間で深刻な対立をうむことがあります。
特に、遺言書の内容に納得できない場合、一定の権利を主張できる制度が存在します。
本記事では、その制度の仕組みや請求手続きを解説します。
遺留分とは何か
遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の相続分のことです。
たとえ被相続人が遺言で全財産を他人に与えると記した場合でも、遺留分を有する相続人はその権利を侵害された分について「遺留分侵害額請求」をすることで金銭的な補填を求めることができます。
遺留分の割合は、相続人の構成により異なります。
遺留分は遺族の生活を守るための制度です。
遺留分の対象となる相続人
遺留分を請求できるのは、すべての相続人ではありません。
対象となるのは、以下のとおりです。
- 配偶者
- 子(代襲相続人を含む)
- 直系尊属(父母など)
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺留分のある相続人がいない場合は、全財産を遺言などで自由に分配できます。
遺留分の割合と計算方法
遺留分は、相続人の構成により法定相続分の一定割合が保障されます。
主な目安は次のとおりです。
- 配偶者や子がいる場合:遺産全体の2分の1
- 直系尊属(親など)のみの場合:遺産全体の3分の1
たとえば、子1人だけが相続人の場合、遺留分は全財産の2分の1となります。
計算では、遺贈や生前贈与も含めた「遺留分算定の基礎財産」をもとに割合を適用します。
遺留分侵害額請求の手続き
遺留分を侵害された場合、対象となる財産を取り戻すことはできませんが、金銭での補償を請求することが可能です。
これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。請求の流れは以下のとおりです。
- 遺言の内容や贈与の事実を確認
- 侵害された遺留分の割合と金額を計算
- 相手方に内容証明郵便などで請求意思を通知
請求しても応じない場合は、家庭裁判所で調停や訴訟を起こすことになります。
遺留分に関する注意点
遺留分に関するトラブルは、相続手続きを複雑にする要因となります。
制度を理解し、事前に対策することが重要です。
遺留分には時効がある
遺留分侵害額請求は、相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内に行使する必要があります。
また、相続の開始から10年が経過すると、権利は消滅します。
まとめ
遺留分は、相続人の最低限の権利を守るために設けられた制度です。
配偶者や子にとっては、相続財産の一部を確保する重要な手段となります。
遺言や贈与によって遺留分が侵害された場合でも、金銭での補償を求める方法があります。
遺留分を侵害されているのではないかと不安に思った方は、弁護士への相談を検討してください。